
15歳のテロリストを読んでみたいけど、どんな内容なの?
当記事はこのような悩みをもつ方へ向けて書かれています。
この記事の内容
- 「15歳のテロリスト」のあらすじ
- 「15歳のテロリスト」の注目ポイント
- 「15歳のテロリスト」の感想
今回は15歳のテロリストのあらすじや感想を書いていきます。
少年がなぜテロリストを起こしたのかという謎を暴くような構成になっており、ミステリー小説が好きな方は必見です。
また、ライトノベルということもあり、難解な言葉を使っておらず比較的分かりやすい文章です。
分量自体も250ページ近くと3時間もあれば読み切れるくらいのページ数なため、初めて小説を読む方にもおすすめできます。
また、考察(私の独断と偏見)やネタバレありの感想については、下記のnoteで書いているので気になる方は見て頂ければと思います。
もくじ
あらすじ

「すべて、吹き飛んでしまえ」
突然の犯行予告のあとに起きた新宿駅爆破事件。容疑者は渡辺篤人。たった15歳の少年の犯行は、世間を震撼させた。
少年犯罪を追う記者・安藤は、渡辺篤人を知っていた。かつて、少年犯罪被害者の会で出会った、孤独な少年。何が、彼を凶行に駆り立てたのか――? 進展しない捜査を傍目に、安藤は、行方を晦ませた少年の足取りを追う。
事件の裏に隠された驚愕の事実に安藤が辿り着いたとき、15歳のテロリストの最後の闘いが始まろうとしていた――。
15歳のテロリストー松村涼哉
記者の安藤とテロリストの渡辺篤人、二人の視点でこの物語は進行します。
安藤と渡辺篤人はどちらも少年犯罪の被害者であり、大切な人を亡くしています。
渡辺篤人は議員に少年法の改正を訴えるほどの迫力でした。
互いに起こったことは似ているけれども、安藤は記者として少年犯罪を追い、少年はテロリストになります。
少年法はこのままでいいのか、加害者と被害者の違い、復讐の重み、現実でも起こりえるような問題をテーマにしています。
注目ポイント

注目ポイント
- 少年法について
- 加害者の家族もまた加害者なのか
- 渡辺篤人(テロリスト)の目的
注目ポイント①少年法について
この物語のテーマである「少年法」。
少年法は実名での報道がされず、刑期も比較的に軽いものになっています。
被害者側の抑えきれない怒りは文章を通してでも伝わってきます。
しかし、加害者の更生の余地は不必要かと問われたら、そこもまた一概に「ハイ」とは言えないでしょう。
そんな少年法を取り扱うことの難しさや、厳罰化が必要かどうかについて着目していただければと思います。
注目ポイント②加害者の家族もまた加害者なのか
テロリストの渡辺篤人の視点では、加害者の家族との関係が描かれます。
現実でも、加害者の家族について言及されることは多々ありますよね。
「なぜこんな子供に育てたのか」「家族にも責任がある」など、加害者の家族を責めるような意見が多数見られます。
反対に「家族に責任はないんじゃないか」などの家族を擁護するような意見もあるなど、多種多様です。
問題について考える一つのきっかけになればと思います。
注目ポイント③渡辺篤人(テロリスト)の目的
この物語のミソと言っていい、重要なポイントです。
「15歳のテロリスト」題名から惹きつけられる素晴らしい小説でした。
ここでは一切触れません。
是非読んでお確かめください。
感想(ネタバレなし)

「少年法」刑期も軽く、名前も公表されることがない、被害者からしてみると鬱憤の収まらないような法です。
被害者側の気持ちで読むと、とても涙が出るような出来事です。
この小説で少年法の甘さ、軽さを再認識させられました。
しかし、「少年法の厳罰化」これだけで済むような物語ではありません。
みなさんは加害者の家族について考えたことはありますか?
実際にある事件でもSNSを覗けば「どうしてそんな子供に育てたんだ」「親も責任をとるべきだ」と家族にも罵声を浴びせるような意見が多数です。
はたしてその言葉は正義の主張となるか、それとも言葉の凶器となるのか、、、
そして加害者も罰せられ牢を出たあとも、身を裂くような目に合うでしょう。
「当たり前だろ」と思うかもしれませんが、その「当たり前」の暴力性に気づいていますか?
被害者だけでなく、加害者の問題についても迫るような内容です。
ぜひ小説を手に取って考えてみてください。
感想(ネタバレあり)
ここで書くのは私(kiki)のエゴも交えた考察と感想になるので、興味がない方やそういったものが嫌いな方はブラウザバックをお願いします。
今回の記事では『日付が進まなくなるんですよ』(p、4)をくみ取って書いていきます。
まず、この小説は記者の安藤とテロリストの渡辺篤人が日付を進めるまでの物語だと思います。
安藤は記者として渡辺篤人の事件に関わるわけですが、復讐心で渡辺篤人を追っているような言動が伺えます。
後輩の荒川には、渡辺篤人に同情するなと圧をかけたり、内心で怒るようなそぶりを見せました。
もちろん、犯罪をすることは悪いことですが、「なぜそのような事件を起こしたか」などの背景にある真実を見ようとせず、加害者をただの悪と決めつけているように感じます。
この物語の肝である『復讐にも、赦しにも、そこには真実が不可欠なんだ』(p、223)とは反対の行動であり、真実を知ることこそが、日付を進めるための一歩だと考えるなら、安藤が彼女の死から停滞している描写になるということです。
関連して気になったのが、74pに株などの話をして、渡辺篤人を非難する描写です。
言っていることは間違っていないように思えます。理屈もしっかり通っているし、爆発ではない形で被害を受けた方もいるでしょう。
しかし、どうしても渡辺篤人を悪にしたいという気持ちがあるように思えます。
エゴを含んだ解釈になる可能性が高いですが、駅のホームで飛び降り自殺をするニュースを例にします。
SNSで検索すると、「死ぬのはいいけど、迷惑にならないように死んでくれ」や「運転手が精神疾患になったらどう責任を取るんだ」などの自殺した人を非難するような内容を見かけます。
これらの意見は別に間違っているわけではありませんが、「自殺」という事件の趣旨としては違います。
自殺に対して、動機や背景が重要になる筈なのに、そういった考えが先行し、物事の真実がぼやけてしまいます。
安藤も「15歳の少年がテロリストになった」という事件の本質を見るのではなく、株や経済の話を持ち込んで渡辺篤人を非難する。
安藤が渡辺篤人を悪者に見ようとしているのが余計分かる文章ではと思います。
結局のところ、安藤は灰谷ヒイロに復讐をしてから、加害者を悪にすることによって、復讐を続けているのでしょう。
「日付が進まなくなる」という言葉は彼にも当てはまっていたという事です。
渡辺篤人についてですが、ずっと復讐に燃えながら過去の事件に思いを馳せている描写から、彼の日付が止まっている様子は何となくわかると思います。
あまり触れる必要はないでしょう。
つづいて、彼らの転換点なのですが、渡辺篤人は灰谷アズサとの交流で自分なりの答えを見出したということは分かります。
一方、安藤については、正直分かりませんでした。
134pに渡辺篤人を擁護したいという気持ちがあったことを自白しているので、この場面より前に何かしらの転換点がある筈なのですが、見つけられず、、、(もしかしたらこの読解自体が間違っているの可能性もありますがw)
今までと違いそうな点としたら、安藤の付き人、荒川が転換点を握っているような気がしますが、これ以上考えても進みそうにないので、転換後について書いていきます。
二人の終着点は『復讐にも、赦しにも、そこには真実が不可欠なんだ』(p、223)に繋がるのではと思います。
渡辺篤人については、そのままなので説明はいらないでしょう。
安藤については224pで自分が復讐をしたことにより、犯罪の歯車を起こしてしまった可能性があるという真実を渡辺篤人に提供します。
このまま、記者という真実を書く仕事として、復讐や赦しを加害者、被害者たちに届けるのでは私は考えます。
なかなかの曲解かもしれませんが、ここまで書けて良かったです(笑)
何か意見がある方がいましたら、TwitterにてDMして頂ければと思います。
ご閲読ありがとうございました。
最後に、感想や気になった点を箇条書きで書いていくので、暇な方は読んでみてください。
・灰谷ヒイロは灰谷アズサが内通者だと気づいていた可能性が高い。ここでは灰谷ヒイロの暴力的な描写が多かったが、アズサに話しかけるシーンなどを踏まえると、家族思いの一面もある。
・218pでスノードロップのカードを手放したシーン。途中でスノードロップが奇跡の象徴にすり替わっていたことを考えると、手から離したことで、死の象徴(渡辺篤人の死)を表している?
・SNSの声についても描かれており、勇気や希望にもなるが、暴力としても一面も大いにある。
・比津はゴミ
松村涼哉の他作品とあらすじ
ここで今回紹介した。「村松 涼哉」さんの他作品を紹介します。
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